競馬予想という行為が、最高に知的な技芸であり、日常生活を削ってでも果敢に挑む価値のある極めてスリリングなゲームであることを、偏執的ともいえる緻密なレース分析と明晰かつ膨大な量の予想文で教えてくれたのは、僕がいまさらここでご紹介するまでもなく有名な予想家、半笑いさんです。新聞であれ雑誌であれブログであれ、毎週毎週様々な媒体に現れる競馬予想は星の数ほどありますが、半笑いさんほど「読ませる」予想文を書ける人を僕は知りません。それはさながら一篇の推理小説。探偵半笑いが、膨大な仮説を論証し、18人の容疑者を徹底的に調べあげ、ついに犯人(=勝ち馬)を追いつめる! なかでも半笑いさんの予想の神髄が最も見事に凝縮された、2009年天皇賞春の予想文がここで読めますので、ラップに興味のある方はぜひ読んでみてください。

さて、半笑いさんのラップ分析では、馬柱に掲載される「テン」と「上がり」を除いた部分を「中盤」と呼び、この「中盤」ラップが分析の重要な要素に位置づけられます。なぜなら「中盤」にこそ「底力」および「格」が表れるからです(半笑いさんの予想理論の概要はここを参照)。たとえば、東京芝2000mのクラス別平均ラップ(テン3F-中盤4F-上がり3F:2007~10年の良馬場のみ単純平均)は以下のとおりです。

36.0-48.0-34.8/1.58.8(古馬OP)
36.2-48.8-35.0/2.00.0(古馬1600万下)
36.5-49.0-35.2/2.00.6(古馬1000万下)
36.5-49.8-34.6/2.00.9(古馬500万下)
37.1-50.9-35.1/2.03.1(3歳未勝利)

即ち「クラスが上がってペースが速くなる」のは「テンだけでなく、中盤に息を入れられないこと」を指しているし、「クラスが上がって1ランク上の末脚が要求される」のは「速くなった中盤を乗り越えた上で、バテずにしっかりした末脚を使うこと」というのが理解できるだろう。それぞれ、単に「テン」「上がり」単独では読み解けない内容である。(半笑い『人生が変わる競馬』より)

緻密なラップ分析って聞くと、競争馬やレースを「見る」ことから話が離れていってるんじゃないの?と思われる方がいるかもしれませんが、そうではないのです。競馬歴の浅い僕が言うのはあんまり説得力がないかもしれませんが、ラップってむしろ、あるレースがいかなる質のレースであったかを理解するための、そして、競争馬の能力や適性を把握するための、非常に有効な回顧ツールだと思います。僕が特にメリットを感じるのは、血統や馬体からではなく、まさに実際のパフォーマンスをラップという実際に刻まれた数字を使って検証できるという点。枠順や不利、距離ロスなどに加え、ラップと照合しながらレース回顧をすることで、ただ漫然と見るだけの回顧では分からなかったいろんなことが「見えて」くるようになるのです。これからラップを勉強したいという人には、『人生が変わる競馬』の第2章「ラップ分析の基礎と応用」をおすすめします。